ストレスチェック義務化で迷わないために50人未満の企業が備えるべきこと

「ストレスチェックが義務化されるみたいだけど…うちにも関係ある?」
「50人未満の企業も義務化って言われても何から始めたらよいの?」
このように悩んでいませんか。
2025年5月に改正労働安全衛生法が可決・成立し、これまで努力義務とされてきた従業員50人未満の企業でも、ストレスチェックの実施が義務化されることになりました。
「専門の担当者がいない」「産業医もいない」のような事情を抱える中小企業は、どのように備えるべきか不安に感じるでしょう。
ストレスチェックは「義務」だから実施するのではなく、社員の心の健康を守り離職のリスクを未然に防ぐための仕組みでもあります。
うまく活用することで、職場の安心感や信頼性の向上にもつながる取り組みです。
今から少しずつ準備を進めることで、義務化に慌てず対応できるようになります。
まずは、制度のポイントを一緒に確認していきましょう。
目次
ストレスチェックが50人未満の企業でも義務化されます
2025年5月に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が可決・成立し50人未満の企業もストレスチェックの義務対象になりました。[1]
ただし、早急に対応しなければならないわけではなく業務上の負担に配慮され、施行までには十分な準備期間が用意されています。

引用元:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要
ここでは、以下の3つに分けてストレスチェックについて見ていきましょう。
「うちはまだ対象外のはず」と思っていた企業にとっても、今後の変化に備えるうえで大切なポイントです。
制度の概要や背景を知ることで、安心して対応の準備ができるようになります。
ストレスチェック制度とは
ストレスチェック制度は、従業員の心の不調を未然に防ぐことを目的として、2015年(平成27年)12月に施行された制度です。[2]
企業が年に1回以上、従業員に対してストレスの状態を確認する「質問票」を実施します。
対象者は「常時使用する労働者」です。契約期間が1年未満や1週間の所定労働時間が短い従業員はストレスチェック実施義務の対象外となるケースもあります。[3]
厚生労働省の提示しているストレスチェックの流れは以下のとおりです。

引用元:ストレスチェックって な~に?|確かめよう労働条件 厚生労働省
また、ストレスチェックには以下のようなメリットがあります。[3]
- 従業員自身がストレスに早く気づき、メンタル不調の予防ができる
- 高ストレス者を早期に発見し、必要に応じて医師による面談などの対応が可能になる
- 職場環境の課題が見えやすくなり、環境改善を行い職場全体の生産性の向上につながる
つまり、ストレスチェックは「義務だから実施するもの」ではなく、従業員の健康と職場全体の健全な運営を支える制度なのです。
今後義務化の対象が広がる可能性も高く「対応しなければならない」と考えるのではなく、企業として「活用していく」という前向きな視点をもつことが大切です。
なぜ50人未満の企業でもストレスチェックが義務化されるのか
今後、50人未満の企業でもストレスチェックが義務化される理由は、従業員数による実施率の差や心の不調者の増加が関係しています。
企業の従業員人数による実施差は以下のとおりです。[4]
【メンタルヘルス対策を実施している企業割合】
- 50人以上:91.3%
- 30~49人:71.8%
- 10~29人:56.6%
【ストレスチェックを実施している企業割合】
- 50人以上:81.7%
- 50 人未満:34.6%
心の不調による労災の件数も増加している背景も、ストレスチェック義務化を後押しする理由のひとつです。
厚生労働省は、令和5年度の精神障害による労災支給決定件数は過去最多の883件と発表しています。[5]
このような背景により、今後は50人未満の企業にも義務化の対象が拡大される見通しなのです。
ストレスチェックが義務化されるまでのスケジュール
従業員数50人未満の企業でのストレスチェックの義務化は、業務負担に配慮して施行期日は公布後3年以内に政令で定めるとされています。[1]
つまり、2028年までに50人未満の企業でもストレスチェックを行えるように準備期間があるのです。
また、2025年に50人未満の企業に向けたマニュアルを作成するために「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループが厚生労働省により設置されました。[6]
マニュアルの公表予定は2026年です。
2028年の本格施行に向けて、今のうちから自社の状況にあわせて、少しずつ準備を始めておくことで、安心して制度を活用することができるでしょう。
義務化後に対応しなかったときの法的リスク
50人未満の企業がストレスチェックを実施しなかった場合の罰則は、2025年9月現在ではありません。
ただし、未実施の場合「安全配慮義務違反」になる可能性はあります。
現在、ストレスチェックの実施報告は50人以上の企業では、労働安全衛生法第100条に基いているため違反すると罰則が科せられます。[7]
そのため、今後50人未満の企業でも法律が改定され法的リスクが生じる可能性もあるでしょう。
ストレスチェック義務化への準備と対応方法
ストレスチェックの義務化に向けて「できるだけ負担をかけずに対応したい」と考える企業も多いのではないでしょうか。
実際に、厚生労働省のサイトでは無料の質問票や実施マニュアルも公開されており、自社で対応することも不可能ではありません。
ただし、自社で準備を進めるためには、次のようなポイントを意識することが大切です。
- 実施体制の整備
- 高ストレス者への対応
- プライバシーの扱い方
このように配慮が必要なことが多く「ただ、やればいい」という単純なものではないのが現実です。
とくに、50人未満の企業では「こんなこと会社の人に言いたくない」「ストレス状況を知られたくない」と従業員がストレスチェック自体を拒否することがあります。
ストレスチェックは健康診断と異なり、従業員にとって「義務」ではないため、企業はストレスチェックを強制することはできません。
そのため、プライバシー保護の観点からストレスチェックの実施を外部機関に委託している企業は7割を超えているのです。[4]
安心して取り組むために精神科産業医をパートナーに
ストレスチェックは、厚生労働省のマニュアルや無料の質問票を活用して、社内で実施することも可能です。
ただし実際には「実施者は誰にするのか」「高ストレス者がでたときにどう対応するのか」のような、ストレスチェックをした「その先」まで考える必要があります。
とくに、高ストレス者が面談を希望したときは、企業には産業医による面談の機会を設けなければいけません。
このとき、もし社内に産業医がいなければ、外部に依頼する手間や費用がかかったり、従業員が不安を感じたりするでしょう。
また、50人未満の企業では適切な情報管理が難しく、プライバシー保護の観点から厚生労働省もストレスチェックの外部委託を推奨しています。[4]
こうした背景から「ストレスチェックの体制をどう整えるか」に悩む企業は少なくありません。
そこで、ひとつの方法として、精神科産業医にストレスチェック全体を依頼するという選択肢があります。
たとえば「ここさぽ」では、多くの経験を積んだ精神科産業医が在籍しており、企業の体制や業務実態にあわせた対応が可能です。
さらに、精神科産業医であれば、高ストレス者が面談を希望したときも迅速に対応できます。
企業として外部委託することに「本当に従業員のプライバシー守ってくれるの?」「外部委託って高そう」と、このような不安があるでしょう。
「気になるな…」「少し話を聞いてみたいな」と思ったらまずは、お気軽にお問い合わせください。
まとめ|ストレスチェックで「社員を守れる企業」へ
2025年の法改正により、今後50人未満の企業でもストレスチェックの実施が義務化されます。
すぐに対応が必要なわけではありませんが、2028年までに施行される見通しです。
厚生労働省も小規模企業向けのマニュアルを準備中で、負担の少ない導入ができるよう支援体制が整えられつつあります。
とはいえ、実施体制やプライバシーの扱い方、高ストレス者への対応など、考えるべきことは少なくありません。
「うちのような規模でもできるのかな」「何から始めればいいのかわからない」と不安なときは、外部の専門家と連携する方法もあります。
義務化が始まってから慌てるのではなく、今のうちに「自社に合った進め方」を考えてみませんか?
ここさぽでは、準備段階からのご相談にも丁寧に対応しています。
気になることがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。
【参考文献】
[1] 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497667.pdf
[2] ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
[3] ストレスチェックって な~に?|確かめよう労働条件 厚生労働省
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_stresscheck.html
[4] ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめhttps://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001323707.pdf
[5] 令和5年度「過労死等の労災補償状況」を公表します|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40975.html?utm_source=chatgpt.com
[6] 「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループの設置について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001543077.pdf
[7] ストレスチェック実施後の報告書の提出について|大阪労働局・各労働基準監督署https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/var/rev0/0109/4183/281104-1.pdf