高齢社員のメンタル不調とどう向き合う?世代をこえて安心して働ける職場づくり

「最近、高齢社員と若手社員の間に緊張感がある」

「高齢社員のミスが目立って、現場から不満の声が上がっている」

高齢社員の就業継続が当たり前になった今、企業として避けて通れないのが、職場での「世代間のストレス」や「高齢社員のメンタル面での支援」です。

年齢を重ねることで生じる認知機能の変化やうつ症状は、気づかれにくいまま業務に支障をきたしていることがあります。

この記事では、高齢者に多いメンタル不調の特徴企業としてできる具体的な支援策について解説します。

高齢社員本人へのサポートだけでなく、共に働く社員への配慮、外部との連携のヒントも紹介します。

年齢にかかわらず、誰もが安心して働ける職場づくりを目指す参考にしていただけますと幸いです。

高齢社員と働く職場で何が起きているのか

高齢社員と働く職場では、社員間でさまざまな戸惑いやすれ違いが起きることがあります。

よく見られるケースは以下の3つです。

ここでは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

仕事のミスや判断の遅さが目立ってくる

年齢を重ねるにつれて、注意力や判断力、記憶力の低下が少しずつ進行します。

本人に自覚がなくても、周りから見ると「判断に時間がかかる」「うっかりミスが増えた」のような変化が目立つことがあるのです。[1]

たとえば、以下のような場面で周りが戸惑いを感じるケースもあるでしょう。

  • 確認不足によるミスが増える
  • 指示を何度も確認しないと行動に移れない
  • 報告や判断に時間がかかり業務が止まってしまう

「高齢だから仕方ない」と思っていても、共に働いている社員のストレスにもなりかねません。

そのため、高齢社員の体調や職場環境、業務の負荷などをふまえて適切にサポートしていく必要があるのです。

高齢社員への「遠慮」がかえって社内の空気を悪くする

高齢社員に対する以下のような「遠慮」や「気遣い」は、仕事上の情報共有や安全確保にも関係するでしょう。

  • 年齢に配慮しすぎた対応
  • 業務上の指摘を避ける風潮

たとえば、明らかなミスでも誰も注意せずに放置されることがあります。

また、若手社員の中には「失礼にならないように」「年上だから言いにくい」といった理由から、「わたしが我慢すればいい」と引き受けすぎてしまうケースも少なくありません。

こうした状況が続くと、高齢社員本人も孤立感や居づらさを感じることがあります。

高齢社員の特徴に合わせた配慮は必要ですが、お互いに遠慮しすぎる状況が続くと、職場の空気が悪くなるのです。

お互いの関係を見直し、思っていることを伝えやすい職場環境を整えることが、企業全体の「働きやすさ」につながっていきます。

若手社員と仕事に対する姿勢や価値観にギャップが生じる

年齢の違いにより、仕事に対する価値観や業務への姿勢にもギャップが生じやすくなります。

世代間で仕事に対する考え方や働き方の感覚のギャップがストレス要因になることも少なくありません。[2][3]

たとえば、若手社員は昇進に対する意欲が低下している一方で、高齢社員は「生きがい」を目的に働いているなど、仕事に対する考え方に違いが見られます。

ほかにも、若手社員は効率化を重視するのに対し、高齢社員は今までの経験や手順、自分流のやり方を通そうとすることもあるでしょう。

このような仕事に対するスピード感やモチベーションの違いが、お互いのストレスになりやすいのです。

そのため企業は、世代間の価値観の違いを前提に、お互いの特徴を理解し合える環境づくりやコミュニケーション支援に取り組むことが求められます。

高齢社員に多いメンタル不調の特徴

高齢社員のメンタル不調で、とくに注意したいのが、うつ症状と認知機能の低下です。[1]

【うつ症状】

  • 集中できない
  • 気分が落ち込む
  • 慢性的なだるさや疲労感が続く

【認知機能の低下】

  • 業務手順を忘れてしまう
  • 判断や対応に時間がかかる
  • 同じ質問や確認を何度も繰り返す

高齢者のうつ症状は、気分の落ち込みが目立たないことも多く、からだの不調としてあらわれるケースが少なくありません。

「年齢のせい」「疲れやすくなっただけ」と受け止められ、本人も周りも見過ごしやすいのが特徴です。

また、うつによる物忘れや意欲の低下が、認知症と誤解されることもあります。

とくに「食欲がない」「眠れない」「楽しめない」といった変化が続いているときは、身体疾患との関連だけでなく、メンタルの不調にも目を向ける必要があるのです。

高齢社員のメンタル不調にある背景

高齢者のうつ症状や認知機能の低下の背景には、社内のストレスだけではありません。

以下のようなプライベートなイベントや身体の変化が関係している可能性があります。[1]

  • 配偶者や友人との死別
  • 子どもの独立による孤独感
  • 持病や身体機能の衰えに対する不安

大切な人との別れや、身体が思いどおりに動かないもどかしさは、周りからは気づかれにくいものの、心に大きな負担を与えます。

企業は、仕事上のミスや体調不良のような表面的な変化だけでなく背景にも目を向け、早めに気づける体制を整えましょう。

高齢社員・共に働く社員へ企業ができる対応

高齢社員へのメンタル面をふまえた対応は、年齢や変化を理解したうえで、必要な配慮を行う必要があります。

ここでは、高齢社員本人に向けた対応と、共に働く社員に対する配慮の両面から、企業ができる具体的な対応について解説します。

また、社員全体のメンタルヘルスを見える化する方法として「ストレスチェック制度」が有効です。

職場のストレスチェックについては、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

高齢社員本人に向けた対応

高齢社員が安心して働けるようにするためには、体調や作業能力に合わせた業務内容の調整が必要となります。

高齢社員がムリなく働けるよう、企業ができる具体的な配慮は以下のとおりです。[4]

【業務内容の調整】

  • 責任の重すぎる業務を軽減する
  • 作業手順の簡素化・サポート体制を整える
  • 集中力や注意力が必要な作業は作業時間に配慮する

【体調や心理面への配慮】

  • 心身の不調を相談しやすい雰囲気づくり
  • 定期的に1対1の面談で細やかに声をかける
  • 定期的な健康チェック・産業医面談の機会を提供する

【やりがいの維持・活用】

  • こまめに感謝や気づきを伝える
  • 経験や知識を活かせる場面をつくる
  • 責任の軽い仕事でも役割の意味を言語化して伝える

たとえば、「○○さんのサポートで助かっています」のように感謝を言葉にして伝えたり、簡単な作業でも「この作業が全体の流れにどう貢献しているか」を言葉で伝えたりすることで、頼られ役に立っているという自信を育むことにつながります。[5]

ほかにも、視力の低下に配慮した照明の確保や、通路や階段へのすべり止めを設置など、年齢に応じた職場環境への配慮も必要です。

まずは「うちの会社でもできそうかな?」と思える対応から取り組んでみましょう。

共に働く社員への対応

高齢社員への配慮にばかりでなく、若手や中堅社員が不満を抱え込まないようにするサポートも必要です。

一方的な「我慢」や「遠慮」は、ストレスや不満が溜まるため、共に働く社員へは以下のような対応を参考にしてください。[5]

【安心して声をかけあえる環境づくり】

  • 若手社員も意見や不安を伝えやすいように共有の場を設ける
  • 伝え方や受け取り方を学ぶ研修や対話形式のワークを取り入れる

【世代の違いを理解して高齢社員とも話しやすい雰囲気をつくる】

  • チーム内でお互いの強みを言語化できるワークを用いる
  • 「遠慮」しすぎずにフラットな関係性がよいことを企業が伝える
  • 世代間の働き方・価値観の違いを共有する社内勉強会や研修の場を設ける

【ひとりで不満や負担を抱え込ませない仕組みづくり】

  • 若手社員のモチベーションやメンタルケアにも目を向ける
  • 実務負荷の偏りをリスト化し必要に応じて業務配分を調整する
  • フォロー業務が特定の社員に偏っていないかを定期的に確認する

企業が従業員同士の会話を重視した「関わりあう職場」をつくっていくことが大切です。

「どうすればお互い気持ちよく働けるのか」を考えることで、世代をこえて支え合える職場づくりにつながるでしょう。

社内のみで抱え込まずに外部との連携も考えよう

高齢社員のメンタルヘルスや働き方に関する課題は、必ずしも企業の中だけで解決できるとは限りません。

たとえば「最近ちょっと様子が気になるけれど、どう声をかければいいかわからない」「体調不良が続いているようだけど、業務上どこまで配慮すればいいのか判断に迷う」など悩むときもあるでしょう。

そのようなときこそ、社内で抱え込まず外部の専門的な支援を活用することで、高齢社員にとっても企業にとっても、ムリのない健やかな職場づくりが目指せます

「ここさぽ」では、企業のご担当者が抱える「誰かに相談したいけれど、社内では話しづらい」のような悩みに、第三者として中立的に寄り添います。

社員本人への支援だけでなく、対応する側の不安や迷いにも伴走しながら、具体的な対応策を一緒に考えていくことが可能です。

「ちょっと気になるな…」と思ったら、お気軽に下記のボタンからお問い合わせください。

まとめ|世代をこえて安心して働ける職場づくりのために

高齢社員が当たり前のように働き続ける時代になり、職場では「世代間の価値観の違い」や「年齢にともなう変化」と、どう向き合っていくかが大きなテーマになっています。

大切なのは、どちらか一方が無理をしたり我慢を強いられたりすることではなく、企業全体で支え合える関係性や仕組みを築いていくことです。

「どんな声かけがいいのかわからない」「伝え方に悩む」というときは、社内だけで抱え込まず、専門機関のサポートを活用するのもひとつの方法です。

ここさぽでは、世代間のコミュニケーションや職場内の人間関係のご相談も受け付けています。

「どこから手をつけていいのかわからない」「誰に相談したら…」と悩んだら、お気軽にお問い合わせください。

一緒に社員が働きやすい職場環境を考えましょう。

【参考文献】
[1] 資料8-1 高齢者のうつについて|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-siryou8-1.pdf

[2] 若年勤労者の会社・仕事観 と企業の人事管理|林 大樹
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arls/15/0/15_arls015.025/_pdf/-char/en?utm_source=chatgpt.com

[3] 高齢者雇用時代における産業保健|労働者健康安全機構(JOHAS)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpo21/sarchpdf/84_2.pdf

[4] 高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001557559.pdf?utm_source=chatgpt.com

[5] 高齢者と若年者が共存する職場のマネジメントの検討 ―中小企業の経営サイドからの分析| 岸田 泰則、石山 恒貴
https://hurin.ws.hosei.ac.jp/wp-content/uploads/2019/11/vol08_01.pdf?utm_source=chatgpt.com

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