長時間労働対策で社員を守る!企業が気づきにくい健康リスクへの対応
「長時間労働が社員の健康によくないことは分かっているけど、売り上げが下がらないか心配」
「会社の業績も下げずに長時間労働しなくてもよい対策はないかな?」
このような葛藤を抱える企業は少なくありません。
長時間労働で社員が疲れてしまい、仕事のパフォーマンスが落ちたり職場を離れてしまったりしては、業績アップや生産性の向上という本来の目的が果たせなくなってしまいます。
社員が健康的に働ける環境づくりは、会社の業績や人材の定着にもつながります。
この記事では、長時間労働における健康リスクや、現場で見過ごされがちな実態、すぐに取り組める長時間労働対策を紹介します。
あなたの会社の働き方を見直すきっかけになりますと幸いです。
目次
長時間労働とは1日8時間・週40時間を超える働き方
日本には、働く人の健康を守るために法定労働時間が定められています。
「1日8時間・週40時間」が基本です。[1]
これを超えて働く時間が積み重なると、長時間労働になります。
さらに、時間外・休日労働も月45時間以下に努めなければいけません。[2]
特別条項付きの協定がある場合でも、健康障害を防ぐために月45時間以下を目指しましょう。
「うちの会社は大丈夫」と思っても、法定の枠を超えていないか、時間外がどれほどあるかを定期的にチェックすることが安心につながります。
長時間労働による健康リスク
長時間労働が続くと、心と身体の両方に少しずつ負担が溜まります。
長時間労働が原因で、脳梗塞のような「脳血管疾患」や心筋梗塞や狭心症のような「心疾患」につながるリスクも少なくありません。[3]
脳・心疾患での労災件数は、4年ぶりに200件を超え令和5年度には216件が労災認定されるほどです。[4]
また、精神疾患でも令和元年度は509件なのに対して令和5年度は883件と増加しています。[4]
心の病気は「ちょっと最近頑張りすぎていたかな」「疲れがたまっているのかも」と本人も見逃しがちです。気づかない間にストレスが溜まり、うつ病や適応障害などの心の病気になることもあるでしょう。
長時間労働は目に見えない形で健康リスクを高めます。
だからこそ、早い段階で気づき長時間労働を見直す必要があるのです。
「知らなかった」では済まされない長時間労働による企業のリスク
社員の健康不調が長時間労働をきっかけに生じたとき、企業は「知らなかった」では済まされないケースもあります。
労働災害によって生じるリスクは以下のとおりです。[5]
- 刑事上の責任
- 民事上の責任
- 行政上の責任
- 保障上の責任
- 社会的な責任
これらのリスクは、すべてのケースで発生するわけではありませんが、あらかじめ備えておくことで未然に防ぎやすくなります。
ただ、社員一人ひとりの健康を守るために、企業の中だけで対処するのは難しいでしょう。
すべてを自社で抱え込まず、外部の産業医の力を借りるのも有効な選択肢です。
社員が体調不良を訴える前に、長時間労働の実態を見直し、心身ともに健康で働ける環境を整えていきましょう。
ここさぽでは、あなたの会社にあった健康対策や職場環境の見直など、具体的なご相談にも対応しています。まずは、お気軽にお問い合わせください。
長時間労働が続く企業の見えにくい実態
長時間労働が続く職場では、管理職の目が届きにくい実態が隠れていることがあります。
- 社員は「今日自分がやらないと、周りに迷惑をかけてしまう」と無理をして業務をこなす
- 残業でなんとか業務を終えても、身体には少しずつ負担が蓄積していく
- 体調を崩すことで作業効率が落ち、残業が日常的になっていく
- 残業が続いていても「このくらいの業務ならこなせている」と、管理職が社員の負荷に気づかないまま業務を任せてしまう
多くの社員が業務自体はできているため、裏で無理をしていることに気づきにくいのです。
社員が無理をして業務を続けているうちに、限界を迎えて体調を崩し休職や退職につながってしまうケースが多くみられます。
結果的に、現場が回らなくなり、さらに他の社員の負担が増え、さらに体調不良者が増えたり休職者が増えたりするという悪循環になってしまうのです。
早めに気づき対策しなければ、深刻な人材ロスや生産性の低下につながりかねません。
長時間労働の悪循環を断ち切るために、次で紹介する対策を参考にしてください。
長時間労働対策への取り組み5選
社員の健康のために労働時間の管理は欠かせません。
ただし、会社を経営している側から見ると、業績悪化や売り上げの減少は避けたいものです。
ここでは、社員の健康管理をしつつ経営面もカバーする以下のような対策を具体的に紹介します。
「うちでもこれならできそうかな?」と思える対策から取り組んでください。
勤怠管理や業務状況の「見える化」
社員がどれだけ働いているか「見える化」する体制づくりが必要です。[2]
見える化されていない職場では、長時間労働や業務の偏りに気づきにくく、対応が遅れがちになります。
業務の状況を見えるようにすることで、どこに負担が集中しているのか、どのような業務が滞っているのかを把握できます。
また、社員自身も「ちょっと働きすぎていたな」と気づくきっかけにもなるでしょう。
業務の見える化は、無理のない働き方を促すきっかけになり長時間労働の削減にもなるのです。
ノー残業デーや退勤目標時間を設ける
ノー残業デーを設定したり、退勤目標時間を設定したりすることで、従業員は所定の労働時間で仕事をこなそうと意識するため、段取りや効率化を考えるきっかけになります。[2][6]
たとえば、毎週水曜日をノー残業デーにしたり、退勤目標時刻を各部署で共有したりすることで、従業員は時間内に仕事を終わらせるための段取りや効率化を考えるようになるでしょう。
導入してすぐは慣れずに戸惑うこともありますが、継続することで「定時退社が当たり前」という雰囲気づくりにつながります。
管理職が長時間労働に気づける力を高める
長時間労働への対策として、管理職が部下の長時間労働に早期に気づく必要があります。[6]
業務の偏りや部下の疲労に気づかなければ、対策ができません。
気づける力を高めるには、以下のような方法があります。
- 管理職で勉強会を行う
- 社員の業務を見える化する
- 社員と定期的に話す機会をつくる
管理職が「業務はこなせていたけど、無理をしていたんだな」と早く気づくことで、業務量を分担したりアドバイスしたりすることもできるでしょう。
ここさぽでは、産業医による長時間労働に気づく力を高める勉強会のような相談へも対応しています。
あなたの職場にあった健康対策をお手伝いできますので、まずはお気軽にご相談ください。
ストレスチェックと相談できる場を整える
ストレスチェックを行うことで、社員が「調子が悪い」と言いやすい空気をつくれるでしょう。
ストレスチェックの結果を放置せず、相談・面談・外部機関との連携に活かすことで、心身の不調を早めにキャッチしやすくなります。
たとえば、次のような取り組みをしてみましょう。
- ストレスチェックの活用方法を社内で共有する
- ストレスチェックの結果をふまえて産業医との面談体制を整える
- 社内に相談窓口を設けたり外部のカウンセリング窓口と連携したりする
ストレスチェックの内容や結果が、人事評価に関係しないことを示すことも大切です。[7]
原則として結果や内容は本人にのみ通知され、あなたの明確な同意なしに会社(上司や人事担当者など)に開示されることはありません。
相談しやすい環境を整えることで、社員は不調をためこまずにすむでしょう。
結果的に、長時間労働の積み重ねによる心身の負担を減らし、社員の健康維持にもつながります。
ストレスチェックについては下記の記事で詳しく解説しています。
あわせてご覧ください。
経営者のメッセージで職場の空気を変える
長時間労働を減らすためには、現場任せでは限界があります。
経営者からの明確なメッセージがあると、職場全体の意識と行動によい影響を与えるでしょう。[8]
経営者が自ら社員に向けて発信することで、「業務時間内に終わらなければ残業するしかない」という空気が変わっていきます。
たとえば、「今の業務量では厳しい」と素直に相談できたり、「周りに助けを求めてもいいんだ」と感じられるようになったりするでしょう。
その結果、健康的に働くことや働き方の見直しが大切であると気づき、職場の空気が変わってきます。
まとめ|長時間労働の対策は社員と会社の未来を守る
長時間労働を放置すれば、社員の健康が損なわれるだけでなく、生産性が低下したり社員が定着しにくくなったり、さらには企業の信頼にも影響しかねません。
いま働き方を見直し、無理のない職場環境づくりに取り組むことが大切です。
社員が安心して働ける職場は、結果として会社の力を底上げしてくれるはずです。
「健康的に働く」ことを企業全体の成果として捉え、できることから始めてみましょう。
ここさぽでは、あなたの会社にあった具体的な対策を一緒に考えサポートします。お気軽にご相談ください。
【参考文献】
[1] 労働時間・休日|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html
[2] 長時間労働の削減に向けて|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/nagasaki-roudoukyoku/library/nagasaki-roudoukyoku/kijun/201507/chojikan-15071601.pdf
[3] 脳・心臓疾患の労災認定|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/2207252-1.pdf
[4] 令和6年版 過労死等防止対策白書〔概要版〕|厚生労働省https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/gian_hokoku/20241011karoushigaiyo.pdf/$File/20241011karoushigaiyo.pdf
[5] 5 労働災害の発生と企業の責任について|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/100119-1e.pdf
[6] 働き方・休み方改善サポート|厚生労働省
https://work-holiday.mhlw.go.jp/case/commentary.php?utm_source=chatgpt.com
[7] 労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf
[8] 長時間労働削減を始めとする働き方の見直しに向けた取組に関する要請書|厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/r07_roudousya_daitai_youseisyo_.pdf